narikimの日記

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城の崎にて

 

五六豪雪 - Wikipedia

1981年1月、北陸地方の豪雪を知り、清さんはその豪雪の最中にうら若き私を連れわざわざ旅をした。


「城の崎にて」の舞台となった城の崎温泉に着いたのは、もう夜になっていた。大谿川に舞い散る白い雪のはんなりした風情ある趣が、忘れられない思い出として今も私のうちに生きている。


湯上りに浴衣姿がよくお似合いの清さんと私は、部屋に運ばれてくる料理を一つひとつ味わい堪能する。熱燗に徳利が絵の様になって清さんの赤らんだ笑顔が綻んでいた。今もその笑顔が私の心に焼き付いている。


清さんは、よく喋っていた。何を話していたか全て忘れてしまったけれども、あんなに楽しそうに話す人を私は知らない。
しかし、同じ様に楽しそうに話す人がいた。娘の翔子である。今更ながら、清さんに快く似たものと驚く私である。

 

私が、京都の綾部辺りに家を求める旅路の道すがら、心の奥底でわくわくしていたのは、35年前に訪れたままでいた思い出の城の崎温泉行き列車に乗車したからだ。

 

城の崎は、あとわずかな距離にある。

清さんはすでにこの世の人ではないけれども、私が赴くその時の城の崎に伴に歩みを揃えてくれるだろうと秘かにほくそ笑んでいる。

 

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