『ソウルメイトは宇宙人』 ①
気楽に生きることはいい。
中野をぶらぶらしていると、信号で転けそうになっているチャリンコの人が見えた。咄嗟に手を差し出すと、よろけながらつかまっている。
目と目が合う。
「あっ」
お互いに、この出会いが何であるかすでに“知って”いた。
紛れもなく、“宇宙人”である。
この感覚は、お互いにすでに“知って”いるのである。
しばらく沈黙を続けた。
沈黙しながら、お互いの交信が進んでいる。
黙々と、私たちは同じ方向へと歩んでいる。
何を言うのでもなく、すでにそうなっていた。
時々、無言の沈黙の向こうで“会話”していた。
「やっと、僕たちの時代が来たね。宇宙時代が来たね。」
「うん、こういうタイミング、気に入ってる。いいね。」
地球上に人間の姿をした宇宙人が暮らしても、誰も違和感を感じないでいる。
むしろ歓迎されているのがわかる。
彼は、名の通った漫画家である。
自然や昆虫の森を描写するのが得意である。
宇宙人なので、生きものたちとの密なつながりを、地球人よりも持っている。
彼の描く漫画には、そのセンスが生きている。
私たちは、自然に共に暮らしていた。
もう何百年もこうしていたかのように、何もかもが自然である。
時折、人間の友人たちが示し合わせたかのように我が家を占領しに来るが、私たちは自然体なので、一向に構わない。むしろ歓迎、ウェルカムである。
“昭和”の残り香漂う佇まいには、彼ら“人間”たちがよく似合う。
そして私たちも“人間”であることを、心身ともに享受している。
つづく